12月14日
革新的な治療(法)の発見史を執筆中という、カナダの臨床薬理学者から、「スタチンを発見できるという感触があったのか」との質問を受ける(Email)。欧米の研究者はよくこの種の質問をする。
11月16日
三重県志摩市で開かれた第30回日本血栓止血学会学術集会共催シンポジウム「抗血栓薬・抗動脈硬化薬の開発の歴史と将来展望」で講演「史上最大の新薬"スタチン"の発見と開発」。会場は数百名の人で超満員であった。学会終了後、M大学医学部教授からお礼の手紙をいただいたので紹介します。
11月13日
午前中は由利本荘市内のホテルで同市内の小中高校の校長、教頭など50名余を前に「理科教育と人材養成―私の例」と題して講演。午後は同市名誉市民並びに功労者顕彰式(本荘文化会館)で、柳田弘市長から顕彰状と名誉市民章を受け、祝賀会に出席(リンク)。
11月10日
第17回三省堂サイエンスカフェ(コ―デイネーター・吉川学毎日新聞科学環境部副部長)で講演「土に隠れた宝物を探しに」。出席者約20名。一般市民が対象で、予想外の質問が出て、好評であった。(リンク)
サイエンスカフェで講演中 |
11月5日
朝日新聞科学欄(朝刊)に「米屋のカビから『世界一の薬』コレステロール低下剤『スタチン』」の見出しで大きな記事が載る。これを読んだ古谷航平氏(元三共発酵研究所)から手紙を戴く。
「…私は上司には内緒で終業時間後に衛生試験所(世田谷区用賀)に出入りしてカビを研究しはじめました。当時(1965,6年頃)衛生試験所真菌室では、黄変米事件に端を発したマイコトキシンが研究の中心であり、主食であるコメは厳しく監視していましたので、各地域からのコメが集められ菌の検査を行っていました。私は、そこから種々のカビを分離し、菌の一部は整理して会社に持ち帰りました。そのときの一株(京都市内の米穀店の米から分離)がML-236B(コンパクチン)生産菌だったのです。小生入社(1965年)2年後(に入手した)のものです。…」
コンパクチン発見当時(1973年)、この生産菌は国立衛生研究所の研究者が京都市内の米穀店で採取した米から分離したカビで(「Pen-59株」と呼んでいた)、その後三共に持ち込まれたものであることは確認できた。しかし、分離したのが誰かは特定できなかった。長い間気にかかっていたので、1年前には衛生試験所の西島正弘所長に調査を依頼したが分からなかった。30数年間気になっていたことがやっと解決し、ほっとしている。会社に内緒でPen-59 株を分離した古谷氏には心からの敬意と謝意を表したい。彼なしには、コンパクチンの発見も、スタチンという薬の存在もなかったのだから。
11月4日
東北大学全学同窓会静岡支部大会(静岡市)で講演「史上最大の新薬"スタチン"の発見と開発」。出席者80名ほど。
11月1日
JBiC 2007(社団法人バイオ産業情報化コンソーシアム)プロジェクト研究成果報告会で特別講演「史上最大の新薬"スタチン"の発見と開発」。ウェブサイトで「数々の困難を乗り越えて新薬の開発に成功した先生の情熱と執念は、会場の皆さんに感銘をあたえました」との賛辞をいただいた。
10月8日
ノーベル生理学・医学賞受賞者に、ノックアウト・マウスを開発に貢献したマリオ・カペッチ、オリバー・スミシース、マーチン・エバンスの3氏が選ばれる (リンク)。
受賞年 | マスリー賞受賞者 | |
---|---|---|
1996年 | マイケル・ベリッジ | |
1997年 | ジュダ・フォークマン | |
1998年 | マーク・タシュン | |
1999年 | ギュンター・ブローベル | 1999年 ノーベル生理学・医学賞 |
2000年 | リーランド・ハートウェル | 2001年 ノーベル生理学・医学賞 |
2001年 | エイブラム・ハーシュコ アレキサンダー・バルシャウスキー |
2004年 ノーベル化学賞 |
2002年 | マリオ・カベッチ オリバー・スミシース |
2007年 ノーベル生理学・医学賞 2007年 ノーベル生理学・医学賞 |
2003年 | ロジャー・コーンバーグ デイビット・アリス マイケル・グルンスタイン |
2006年 ノーベル化学賞 |
2004年 | アダ・ヨナス ハリー・ノラー |
|
2005年 | デイビット・バルコンベ クレイグ・メロー アンドリュー・ファイア |
2006年 ノーベル化学賞 2006年 ノーベル化学賞 |
2006年 | 遠藤 章 | |
2007年 | マイケル・フェルプス |
私は昨年米国の医学賞マスリー賞を受賞したが、5年前の2002年にはカペッチ、スミシースの両氏もこの章を受賞している。マスリー賞受賞者の多くがその5年以内にノーベル賞を受賞している(表)。なお、本年のマスリー賞受賞者にはPETを開発したマイケル・フェルプス(UCLA)が選ばれた(リンク)。
9月22日
第49回全日本病院学会秋田大会(秋田市)で「自然からの贈りもの―新薬"スタチン"の発見と開発」と題して特別講演(公開講座)。
9月17日
Daniel Steinberg博士の「The Cholesterol Wars」がAcademic Press 社から出版される。本書はコレステロール研究100年の歴史を集大成した力作。登場人物の一人として5年前にシカゴのホテルで博士の取材を受け、その後Eメイルで何回もやりとりしたことが懐かしい(リンク)。
9月8日
秋田県栄養士会生涯学習研修会で講演[新薬スタチンの発見と開発」。
8月26-27日
仙台市で開かれた、東北大学創立100周年記念祝賀会(26日)と同式典(27 日)に出席。田中耕一博士,豊田章一郎トヨタ自動車名誉会長らが出席。
8月14日
「世界を変えた分子」(Molecules That Changed the World)と題する化学の教科書を執筆中というアメリカの化学者から、遠藤の写真を載せたいので送ってほしいとのEメイル。
8月3-5日
世界自然遺産・白神山地へ微生物分離に供する土壌採取に出かける。参加者は工藤英美(案内人、秋田県八峰町)、高橋慶太郎(リーダー、秋田県総合食品研究所)木村貴一(秋田県総合食品研究所)、ADEKAの東海林義和ら3氏、日本経済新聞の西山彰彦と中村豊、吉田宇一(岩波書店)、蓮見恵司(東京農工大)、遠藤正悦(秋田県由利本荘市)、私の総勢12名。当初の計画では4日早朝に入山し、世界自然遺産指定区域内(核心部)で一夜を過ごす予定であったが、台風5号の直撃で4日の出発を見合わせ、5日だけの日帰り登山となる。分離した微生物は今後食品と新薬の開発に利用。
白神山地の写真2枚(写真提供:中村豊氏)
参加者一同 | ブナ原生林 |
7月9日
内閣府経済社会総合研究所編集(発行)の「イノベーション事例集 2007」を受ける。本事例集で取り上げた「量子暗号」「太陽電池」「光触媒」など7つの事例の一つとして、「スタチン系薬剤」を紹介。序文(ご挨拶2)で、編集委員会委員長の黒川清内閣特別顧問が遠藤の研究を「コレステロールから人類を解放しよう、という高い志に基づいて始められた」と高く評価(近日中にウェブに載せる予定と聞く。
6月26日
「人命救助(life-saving)の分野で革新的な発見をした科学者を紹介する本を執筆中」というアメリカのライターから、遠藤をその一人に加えたいので、生い立ちから現在までのことについて取材したい、とのEメイル。
6月25日
文部科学省学術調査調整課より、「平成19年科学技術白書」を受ける。「第1部 科学技術の振興の成果」の中の「生活習慣病の克服―コレステロール値を下げる医薬の開発」(pp 36-37)でスタチン開発を紹介(リンク)。
6月23日
日本工業大学大学院「経営イノベーション」で「スタチンの発見と開発」と題して講義。30名ほどの院生(ほとんどが社会人)が熱心に聴講。
6月2日
日本工業大学大学院「経営イノベーション」で「スタチンの発見と開発」と題して講義。30名ほどの院生(ほとんどが社会人)が熱心に聴講。
6月1日
本日から東北大学特任教授に就任。
5月12日
JT研究所(大阪)で講演。200名余の熱心な研究者が集まる。講演後に中村桂子(JT生命誌館長)に会い、同じ敷地内にある同館を案内してもらう。
5月9日
(株)ADEKAで講演「自然からの贈りもの―史上最大の新薬誕生」。櫻井邦彦社長、中嶋宏元会長ら幹部と会う。
4月27日
客員教授をしている金沢大学主催の「出版記念祝賀会」で講演「スタチンから学んだこと―強い影響を受けた科学者たち」。
4月19日
日本国際賞授賞式の式典(国立劇場)、祝宴(帝国ホテル)などに出席。本年の受賞者はフランス、ドイツ、イギリスの3科学者。わが国の受賞者がいないのが少し寂しい。
3月26日
招待を受けて日瑞循環器代謝学シンポジウム(Sweden-Japan Cardiovascular and Metabolic Science Symposium)(ホテルオークラ)に出席。訪日中のカール16世グスタフ国王陛下がシンポジウムの後半にご出席。
3月24日
日本農芸化学会大会総会(東京)で、「農芸化学の発展に功績のあった者に贈られる」同会の名誉会員証と記念メダルを磯貝彰新会長より受ける。以下は謝辞。
本日、この総会におきまして、本会の名誉会員として御承認いただきましたことは身に余る光栄でございます。上野川会長をはじめ、御推薦くださいました評議員の先生方、並びに御承認くださいました会場の皆さまに心からの感謝を申しあげます。
私は大学卒業から今年で丁度50年になりますが、この50年間、一貫して微生物の応用研究をしてきました。その中で、1970年代には、青カビからコンパクチンというコレステロール合成阻害物質を発見して、実験動物と重症患者の血中コレステロールを劇的に下げることを示しました。この研究が基になって、その後スタチンと総称される7種のコンパクチン同族体が世界中で開発されました。スタチンは心筋梗塞、脳梗塞などいわゆる血管障害性疾患の予防と治療のために、現在世界中の4千万人近い患者に毎日投与されています。スタチンの年間売り上げは日本円にして3兆円を突破しました。
スタチンはペニシリンと並ぶ奇跡の薬(ミラクル・ドラッグ)と呼ばれていますが、私は微生物がこの二つに続く第3、第4の奇跡の薬を作っているものと信じて疑いません。そしてそれを発見できるのは農芸化学の研究者をおいておかにはいないと思います。農芸化学の将来を担う若い研究者が近い将来きっとこの夢を実現してくださるものと信じ、期待しております。
本日は誠に有難うございました。
3月21日
生化学の教科書として有名な"Lehninger Principles of Biochemistry"(W.H. Freeman Co., New York)の関係者から、「来秋出版予定の改訂第5版に遠藤の顔写真を載せるので送って欲しい」とのEメイル。第4版にはパスツール、ワトソン、クリック、ジャコブ、モノーなど約80名の科学者の写真が掲載されている。国内の生化学者は見当たらない。80名の中には、コレステロールの生合成と代謝の分野でノーベル賞を受賞したブロック、リネン、コーンフォース、ブラウン、ゴールドスタインら5名とポプジャクの計6名が入っている(第4版の邦語版「レーニンジャーの新生化学、上下」は広川書店から出版されている。
3月19日
東レ科学技術賞等の授賞式(日本工業倶楽部)に出席。式後の祝宴での、江崎玲於奈博士のスピーチは長かったが、機知に富み面白かった。
3月12日
秋田県名誉県民顕彰式(秋田市内のホテル)。寺田典城知事式辞に続き同知事から「秋田県名誉県民称号」と「秋田県名誉県民章」を受ける。引き続き中泉松之助県議会議長、恩師小松順之助先生から祝辞。式後講演「新薬スタチンはこうして生まれた」。この間地元テレビ局の取材を受け、夜は知事主催の祝宴 (リンク)。
3月9,10日
高校時代の無二の親友工藤恒夫氏(中央大学名誉教授、元経済学部長)の通夜と告別式に出席。同年配の友が年々消えていくのは寂しい限り。
3月3日
客員教授をしている金沢大学医学部の金沢リピド・スクールで講義「スタチン開発とエピソード」。
2月18日
毎日新聞の書評欄に、山内喜美子著「世界で一番売れている薬」(小学館)に対する中村桂子氏の書評が載る。山内氏の取材で私が何気なく話した言葉の幾つかを「遠藤語録」とし、本書の魅力のひとつにしているのは意外で、有難い (リンク)。
2月10日
第24回秋田県脳神経研究会(秋田市)で「新薬スタチンの発見と開発」と題して特別講演。
2月3日
第30回未来医学研究会大会―日本発の先端医療テクノロジー(東京女子医科大学)で「史上最大の新薬"スタチン"の発見と開発」と題して特別講演。
「先日は日本血栓止血学会での御講演誠にありがとうございました。スタチンの発見者自らの話を聞くことができ、大変感激し、深い感銘をうけました。まさに研究者としての姿が、そこにありました。先生の御仕事は、人類の歴史に残るもので、その貢献は、永遠に語り次がれてゆくと思います。私も医学生に伝えたいと思います。」